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肺膿瘍・膿胸の菌が口腔内細菌に由来することを遺伝子解析で証明
口腔内の菌が他臓器に感染症を起こし得ることの初の証明
~研究成果が米国細菌学会誌:Microbiology Spectrumに掲載~

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肺膿瘍や膿胸から検出される菌は、口腔内細菌叢の菌と種類が一致することから口腔に由来すると考えられてきましたが、いままで確固たる証拠はありませんでした。この度、独立行政法人国立病院機構・姫路医療センター呼吸器内科の勝田倫子医師らのグループとサンスター株式会社(以下、サンスター)との共同研究により、肺膿瘍・膿胸から採取した膿の中の細菌と口腔の細菌とが遺伝子的に一致することを確かめることに成功しました。
 この研究成果をまとめた論文は2022年 2月16日に米国の細菌学会誌であるMicrobiology Spectrumにオンライン公開されています。
( https://journals.asm.org/doi/10.1128/spectrum.00974-21 )
この結果から、今まで状況証拠しかなかった、口腔の細菌が肺に感染症を起こし得ることの確実な証拠が示され、口腔内を清潔に保つことの重要性を確認するとともに、本研究に用いた手法が後述するように幅広い研究に寄与する可能性が示唆されました。

<論文タイトルと著者>
タイトル:Genetic Homology between Bacteria Isolated from Pulmonary Abscesses or Pyothorax and Bacteria from the Oral Cavity
著  者:Rinko Katsuda, Junya Inubushi, Haruko Tobata, Toru Eguchi, Kunihiko Terada, Ryogo Kagami, Tetsuji Kawamura, Yoshihiro Kajiwara, Yasuharu Nakahara 掲 載 誌:Microbiology Spectrum DOI: https:// doi.org/10.1128/spectrum.00974-21

<研究のポイント>
本研究を成功に導いた重要なポイントが2つあります。

  • 肺膿瘍や膿胸からのサンプルを口腔内の菌の汚染を避けて経皮的に採取したこと。
    膿胸の検体を経皮的に採取することは容易ですが、肺膿瘍の場合は従来、口から入れた気管支鏡を使ってサンプルを採取する方法が行われてきました(右図の*)。しかしこの方法ではサンプルが口腔の細菌に汚染される可能性があります。私たちは以前から、肺の病巣に対して経皮的に細い針を刺して1回の息止めの間にサンプルを採取するという技術をもっており肺の病気の診断に活用してきました。肺膿瘍の診断にもこの方法を使い口腔細菌の汚染なくサンプルを採取し、正しく原因菌を決定することで適切な抗菌薬の選択を行ってきましたが、この方法が今回、本研究にも大きく寄与しました。
  • 遺伝子的に一致する菌か否かを調べる新たな手法を開発。
    口腔内には無数の菌がいますが、その中に肺膿瘍や膿胸から検出した菌と遺伝子が全く一致する菌が存在するか否かを調べることは今まで困難でした。このため私たちは新しい方法を開発する必要がありました(下図)。この方法については専門的になりますが詳細は論文を参照ください。

<本研究の意義>
肺膿瘍や膿胸が口腔内細菌に起因するということは、従来、状況証拠のみに基づく「医学の常識」でしたが、本研究はこの常識に絶対的な根拠を与えました。さらに、本研究で開発した、口腔内細菌叢と他臓器感染症との関連性を証明する手法は画期的と言えます。人体には口腔だけでなく腸、皮膚、膣などにも細菌叢が存在し、さらに環境の中にも土壌、建築内などにも細菌叢があり、これらと疾患との関わり、さらに予防法などについての研究を促進するものと考えられます。

<姫路医療センターにおける今後の展開>
今回の研究は姫路市歯科医師会のご協力を得て肺膿瘍や膿胸の原因菌が口腔に由来することの証拠を示した訳ですが、では菌は口腔からどのようにして肺に運ばれるのか?誤嚥によるものなのか、血流に乗って運ばれるのか、またどのようにして膿瘍を形成するのか?との疑問に対する明快な証拠はまだありません。一般には、肺膿瘍は肺炎が重症化、慢性化した結果とされていますが、今回の経皮的穿刺で診断した肺膿瘍の患者さんの中には肺炎の症状の先行なくたまたま検診で異常陰影を指摘されて受診された方もおられます。また膿胸の患者さんも必ずしも重度の肺炎を伴う訳ではなく気道から菌が運ばれたとは考え難い例もあります。いずれにしても口腔を清潔にする必要性を強く示唆しておりますが、口腔の菌が気道を通してではなく血液に乗って運ばれるのであれば、抜歯時や歯の根元に起こる根尖炎、歯肉の炎症による出血などで血中移行する可能性もあります。このようにまだまだ解明すべき点が残されています。

<サンスターグループにおける「口腔細菌」研究について>
サンスターは、「常に人々の健康の増進と生活文化の向上に奉仕する」の社是のもと、オーラルケア製品、化粧品、健康食品などの事業を行っています。口腔細菌のコントロールは、歯科医院で歯石除去や歯面清掃などの専門的口腔ケアの定期的実施と、セルフケアでの口腔管理が重要です。歯の喪失を防ぎ、食べ物をしっかりかんで食べることは、全身の健康の維持増進につながります。口腔細菌のセルフケアに関しては、2020年のBiocontrol Science( DOI: https://doi.org/10.4265/bio.25.45 )で、口腔用殺菌剤の効果に関する報告を行いました。今回確認された菌種と同じ口腔連鎖球菌の基準株を含む、口腔細菌への効果を報告しています。口腔細菌のコントロールは全身のケアにもつながるというMouth & Bodyの考え方のもと、お口の健康を起点としながら全身の健康に寄与する情報・サービス・製品をお届けすることで、人々の健康寿命の延伸に寄与することを目指していきます。

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